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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密




 パタンと閉まる扉を背につけ、リンゼイの顔の横には伸ばされたジョシュアの腕が置かれる。


「……まったくあなたという方は。どうしてそう無茶ばかりされるんですか」


 嘆息と共に落ちてくるジョシュアの声。リンゼイは肩を縮こまらせ「すみません」と項垂れる。


「あとで私がお送り致します。夜に使用人の部屋を訪ねるような真似は、二度となさってはいけませんよ」


「はい……」


 ジョシュアは仕方なさそうにリンゼイに座るように促す。椅子を引いた手にふと眼を留め、違和感を覚える。


「手袋……外されないんですか」


 仕事中ならまだしも、お仕着せを脱ぎ、普段よりもラフな格好なのに、そこだけ妙に違和感を感じる。


「ええ、まぁ。入浴時と就寝時以外はほとんど嵌めて過ごしております」


「そう、ですか」


 彼なりのこだわりか何かだろうかと、その時は深く考えず、改めて招き入れられた……というよりも、強引に入ることに成功したジョシュアの部屋を見渡す。


 さほど大きくない室内は寝台や小さなテーブルと二脚の椅子を含め、数点の家具のみの簡素なもの。ただそれよりも眼を引いたのは、所狭しと飾られる刺繍の数々だ。




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