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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
額縁に飾られる大小様々な刺繍。花や果実、蝶や鳥。どれも美しく、芸術品といっても過言ではないものばかりだ。
花や果実などは甘い香りが漂ってきそうであるし、蝶や鳥なんかは布から抜け出し飛び立ちそうなほど生き生きとし、色彩豊かな糸で縫われたそれらにリンゼイは眼を奪われる。
「すごく素敵ですね……」
感嘆の溜め息を漏らし、それらを眺める。
「ありがとうございます」
「はい! あのこれって、もしかして全部ジョシュアさんが……?」
「左様でございます」
「本当ですか!? すごい……」
「レオ様や同僚には男が刺繍をするなんて、と笑われますが」
「刺繍でもこれは立派な芸術です! 私なんて、昔ジョシュアさんに教わって以来練習を重ねてきましたけど、こんなにも見事に縫えなくて。それこそ姉に不器用だって笑われたんですか……あ、今のは忘れてください!」
興奮気味に話すリンゼイはうっかり自分の失敗談まで語ってしまい、頬を赤く染めて慌てて取り繕う。
「そういえば昔もご自分の指に針を刺されていましたね」
「それも忘れてください! もう……変なことばっかり覚えてるんですから」
リンゼイは熱い頬を手で覆い、ぷいっとそっぽを向いた。
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