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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
「ですがそれはもうお渡しするつもりはないので、処分しようとしていたところです」
ジョシュアの手が伸びてきてハンカチーフをリンゼイの手から取ろうとしたのを、咄嗟に腕を引いて阻止する。
「処分なんてダメです! ジョシュアさんがキャンディス様を想われて縫ったものを、処分するなんて絶対にダメです」
「リンゼイ様……?」
猛烈な勢いで抗議するリンゼイに、ジョシュアは困惑を浮かべる。
ジョシュアのキャンディスへの想いが込められたハンカチーフ。それを捨ててしまうのは、彼の想いまで捨ててしまうようで嫌だった。
彼らも決して結ばれない運命と知りながら、惹かれ合い、愛し合った。いつか引き裂かれると知りながら──。
きっとこのハンカチーフは、これから嫁ぐキャンディスが幸せになるようにと願いが込められたはなむけだ。離れてしまっても、自分の手で彼女を幸せに出来なくても、キャンディスが幸せであるようにと。
リンゼイは二人のために何かしたいと思っていた。叶うなら二人が幸せになるようにと。だがたとえリンゼイが侯爵に頼み込んだところで、二人は結ばれないだろう。それどころか秘めた関係を暴露することとなり、迷惑をかけてしまうだけ。
金品を渡し、二人を逃がせば、レオナルドにも迷惑がかかる。そんなことをジョシュアがするとは思えないのだ。
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