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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり
突き抜けるような晴天の広がる王城の庭に穏やかな風が吹き、城の周りを囲む青々とした葉をつける木々を揺らす。木の枝で羽を休める鳥たちが快晴を喜んでいるのか、歌うような囀〈サエズ〉りを人々に届けてくれる。
細かな宝石が埋め込まれた支柱が四方にある四阿〈アズマヤ〉にいるリンゼイの耳にも、その心地よい音色が届いていた。
おそらくリンゼイの向かい側に座るジョシュアの耳にも。
二人はこの四阿で、向かい合って刺繍をしていた。
リンゼイがジョシュアの好きなことをしたいと言うと、彼は逡巡ののち「刺繍などはいかがですか」と訊いてきたのだ。
「ジョシュアさんは、刺繍がお好きなんですか?」
「好き、と言いますか、やっているうちに得意になってしまいまして。他のことがよろしいでしょうか」
「いえ、それがいいです! 刺繍教えてください!」
このような会話をし、せっかく良い天気なのだからと、四阿で揃って刺繍をすることになったのだ。
木製のスタンド式の枠に真っ白な布をピンと張り、そこへひと針、ひと針糸を通していく。
一見簡単な作業なのだが、初めてやる刺繍はリンゼイにとってとても難しかった。
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