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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密



 リンゼイはジョシュアの想いがこもるハンカチーフを大切に胸に抱き、彼を見上げる。


「お願いします。その役目、私に任せてはいただけませんか」


 ジョシュアは真っ直ぐと彼の眼を見詰めるリンゼイに、少し困ったような笑みを向ける。


「リンゼイ様。本当にもういいんです」


「どうしてですか? キャンディス様をまだ愛してらっしゃるんでしょう?」


「え……?」


「隠さなくてもいいんです」


 胸元で重なる掌に力が少しこもる。ズキン……と胸が痛んだが、ジョシュアがリンゼイに引け目を感じ、本心では渡したいという願いを我慢して欲しくなくて、気丈に笑みを作ってみせた。


「……あの夜、お二人が逢われているのを見てしまったんです。黙っていてごめんなさい……」


 ジョシュアはそれを聞き、ハッとした表情になる。


「だからあの日、泣いておられたんですか」


「あれは……お気になさらないでください。もう済んだことです」


 リンゼイは大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐くと、出来得る限りの笑顔を作った。






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