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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
「ジョシュアさんに想われている方がいると知ったときはショックでした。でももう大丈夫。国へ帰り、いずれどなたかの元へ嫁いで……ちゃんとジョシュアさんを忘れます」
忘れたくなんかない。いや、きっと忘れられない。だけどそう伝える他、ジョシュアがリンゼイに引け目を感じずキャンディスにハンカチーフを渡す方法が見つからないのだ。
「ジョシュアさんや殿下をお救いする手立てはもうあります。殿下がおっしゃられていた方法なら、お相手の方には申し訳ありませんが、誤魔化せるはずです」
ジョシュアの枷を外せば、すべての者が助かるとレオナルドは言っていたが、枷がなんなのかも鍵がどこにあるのかも見当がつかないのだ。こうする他ない。
努めて明るく振る舞うリンゼイの手首を、ジョシュアは唐突に掴む。あまりの突然なことに驚き、ハラリとハンカチーフが床に落ちる。
「あ……ハンカチーフが……」
「……本気でそんな方法で男を誤魔化せるとでも?」
「ジョ……シュアさん?」
リンゼイの手首を掴むジョシュアは怒りを滲ませている。声もいつもより低く、底冷えするような恐ろしさだ。
「血は花の汁で、拓いた路は時間をかけて誤魔化せるでしょう。ですがこれは……?」
ぐいっと力強く引っ張られたと思いきや、唐突に唇が彼のそれで塞がれた。
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