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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密




「勉強は働きながらも続けます。いずれ父上のお傍で支えていけるよう怠りませんので、どうかお赦しいただけませんか」


 ジョシュアの再三の説得により、折れたのは両親だった。





「すまない、ジョシュア。次期当主たるお前に下働きなどさせてしまうことになって……」


「いいえ、父上。子供の私でも父上のお役に立てることが嬉しいです。一日でも早く父上と母上の元に戻り、お傍で学べるように男爵のお邸でお仕えしてきます」


「ジョシュア。くれぐれも身体には気を付けてね」


「母上もお身体を労わってください。そして元気な子を産んでください」


 家族で力を合わせ、必ずやクラーク家を再興させると誓い、ジョシュアは男爵家へと向かったのだった。






 エドガー男爵家は元は夫人の実家で、婿入りした男爵よりも夫人のほうが力を持っているのは子供のジョシュアにもすぐに解ってきた。


 男爵は夫人の言いなりで、頭が上がらないという噂は使用人の間でよくされていたし、使用人たちも夫人に恐れを抱いていたからだ。


 だがジョシュアは伯爵子息ということもあり、夫人に怒鳴られたり酷い扱いも受けなかったので、あまり気に留めてはいなかった。夫人が家内で幅を利かせるというのはよくある話でもあるからだ。


 ただ厄介だったのは、男爵家嫡男でジョシュアと同じ年のロイドという少年が、事あるごとにジョシュアをからかってくることだった。





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