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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
不安が募る一方で、ジョシュア自身も自分のことで手一杯になる日々が続いていた。
これまでは子供だからということと、身分のこともあり、あまりきつい仕事はさせられなかった。だがこの頃から他の使用人と同じく、力仕事をさせられたりし始めたのだ。
それだけならまだしも、夫人は事あるごとにジョシュアを叱りつけ、時には鞭で手の甲を腫れあがるほど叩いたりもした。
「これはお前が無能だからよ! 叩かれたくなかったらもっとしっかり働きなさい!」
ジョシュアは決して無能などではなかった。独学と言えど勉強はロイドより出来たし──というのも、彼がジョシュアがまともな学びを受けていないからと自らの知識をひけらかすことを言ってくるのだが、その全てを補足することをジョシュアが話し、彼を負かしていた──仕事もミスが少ないと同僚から褒められていたのだ。
夫人はジョシュアの失敗であろうとなかろうと関係なく、彼を痛めつけ悦んでいるように見えた。
それから更に半年も経つと、ジョシュアの手の甲は深い切り傷が付くほどに叩かれ、毎日傷の痛みに耐え。
それでも両親の無事を信じ、幼い妹が小さな手でジョシュアの指を握ってくれたあの強さを支えに、文句のひとつも言わず働き続けていた。
だがあの日──悪夢のようなあの会話を聞き、初めてジョシュアは仄暗い感情を抱くことになった。
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