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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密



「そう大きな声で話すな。もしジョシュアがこのことを知ったら……」


「あら、いいじゃない、聞かせてやれば。お前の父母は食べる物に困って、ガリガリに痩せ細って死んだのよ、って」


 ジョシュアは金槌で頭をガンと打たれた気分になる。眼の前もついに真っ暗になった。


 父と母が本当に……死んだ? 飢えに苦しみ抜いて、痩せ細って……?


 あまりの衝撃に、全身がガタガタと大きく震える。誰か嘘だと言って欲しい。父母は生きている、と。


「それこそ悪趣味だ。生まれたばかりの妹も行方知れずだというのに、子供には酷すぎる」


「だから甘いって言ってるの。どうせ一生この私にこき使われて死んでいくのよ。話を聞いてショックで死のうが、ボロボロになって死のうが一緒よ」


 夫人はケタケタと醜悪な笑い声をあげる。


「最初から気に入らなかったのよ。碌な教育を受けてないくせに、うちのロイドより優秀だなんて」


 話はもう半分ほどしか耳に入ってこなかった。声を上げて泣き出さないようにするので精一杯だったのだ。


「ねえ、あなた。これを聞かせたらジョシュアは本当にショック死するんじゃないかしら」


 ロイドのことを語るとき不機嫌そうだったのが一転し、機嫌よさそうな猫撫で声を夫人は出し、そして更なる地獄にジョシュアを突き落すようなことを言い放った。




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