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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
「クラークは確かに商才はなかった。でもあれだけ失敗が本当に続くと思ってたのかしら? この私が裏から手を回し、クラークの事業を阻んでいたと知ったら、ジョシュアはショックで死んでしまうでしょうね!」
今……なんと言った? 夫人が父の事業の邪魔をしていた?
「そうとも知らず、クラークったら我が家に借金した挙げ句、大切な大切な次期当主を働きに来させちゃって。これでクラーク家の血筋は途絶えたも同然ね」
あははは……と笑う夫人の声が頭にガンガンと響く。
真っ暗だった眼の前が怒りで赤く染まる。バケツの取っ手を握る手の甲からは、夫人の鞭で痛めつけられ瘡蓋〈カサブタ〉となっていた傷口が、いつの間にか強く握りすぎていたことにより瘡蓋が剥がれ、血が流れていた。だが痛みは全く感じなかった。
父や母を死に追いやった張本人がすぐそこにいる。──今すぐに殺してやりたい衝動に駆られる。
一歩踏み出したところで、不意に身体が浮いた。口許を抑えられ、ずるずると引っ張られる。
怒りに満ちた目で振り返ると、邸の家令がジョシュアを抱えていた。
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