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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
家令は人気のない場所までジョシュアを抱えていき、周りに誰もいないのを確認するとジョシュアを下ろした。
「……なぜ邪魔をしたんですか!? あの女を、この手で、殺してやりたかったのに!」
家令は悲痛に顔を歪ませ、震えるジョシュアの肩を掴む。
「それはなりません、ジョシュア様!」
「……ッ!? あなたも……知っていたんですか?」
「ええ、ええ……知っておりましたとも。あなたがクラーク伯爵のご子息だということを」
ロイドはジョシュアを伯爵子息なのに、とからかう時、必ず人の居ない所でしていた。だからこれまで他の使用人にはバレずに済んできたのだが、家令は最初から知っていたと言う。
「私の古くからの友人が、ジョシュア様のお邸で家令をしておりました。私自身も伯爵と直接お会いしたこともございます。……とてもいい方でした。あなたは伯爵によく似ていらっしゃる」
シワの深い眦に薄く涙を浮かべる家令。
家令は今まで父と知り合いだという素振りは見せなかったが、それはジョシュアを他の使用人と同等に扱い、ジョシュアの立場を悪くさせないようにとの心配りからだったとか。
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