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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密




「いいですか、ジョシュア様。お辛い気持ちはよくわかります。ですが今は耐えるのです。あなたは私の知る誰よりも聡明でいらっしゃる。奥様の命を奪うのではなく、ご自分の力でご自分の道を切り拓かれ、きっとまたクラーク伯爵家を再興させることができるはずです」


「伯爵家など……!」


 そんなものもうどこにもないじゃないか。


 父が他界した時点で既に途絶えてしまったも同然だ。領地はすべて没収されているだろうし、伯爵位も取り上げられてしまっただろう。再興などと、軽々しく口にして欲しくない。


「耐えろ、ですって? このまま両親の敵の下で、あの女にこき使われろとでも言うんですか!? そんな屈辱に耐えるくらいなら、即刻あの女を殺して私も両親のあとを追います」


 夫人を手にかければどの道処刑される。けれど敵を討てるならばそれでよかった。だから家令に止めないでくれ、と怒りと憎しみに燃える表情で頼む。


「なりません! ジョシュア様がこの世を去られたら、残された妹君のキャンディス様はどうなるのですか」


「キャンディスは……生きているんですか」


 生後間もないキャンディスは確か行方知れずだと話していた。だが生後半年足らずの妹が生きている可能性は限りなく低いと思っていたのに……。






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