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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
「生きておられます」
ジョシュアに言い聞かせるようしっかりと頷く家令。老人とは思えない強い眼差しで見詰められ、その瞳に嘘はなかった。
「伯爵と命運を共にした友人が最後に私に送った手紙に、伯爵が死の間際友人に預けたと書かれておりました」
キャンディスが……生きている。この世に残された唯一の肉親が。
ジョシュアは震える瞳で家令を見返す。
「どこに……父はどなたの元に預けたんですか!?」
ジョシュアは家令のお仕着せを握り、キャンディスの行方を教えてほしいと頼むが、彼は静かに首を横に振った。
「伯爵は死の間際になってようやく奥様の悪事に気付かれたそうです。それでキャンディス様の身に危険が及ぶのを恐れ、どなたの元に預けられたか誰にも告げられなかったとか」
「そんな……」
誰の元へ預けられたかも解らず、捜す手立てもなく、ジョシュアは呆然とする。だが生きている。きっとどこかで今も……。
そう信じなければ、ジョシュアの心は壊れてしまいそうだった。
「伯爵はジョシュア様のことも案じられていたそうです。ですが家に戻っても飢え死にするだけ。かと言ってこのままこの邸に留まれば何をされるか……。ですがご安心ください。伯爵と友人の最期の願いであるジョシュア様のご無事は、この私が必ずや叶え守ってみせます」
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