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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり
思わず握る針を放り投げ、刺した指を握る。リンゼイが離した針は赤い糸にぶら下がり、布の表面を左右に揺れている。
指先からは赤い血がぷっくりと玉を結んでいた。
「王女さま、どうなされました」
リンゼイの悲鳴を聞いたジョシュアは慌てて席から立ち上がってテーブルを回り込み、リンゼイの横に片膝をつく。
「針で刺されてしまったのですね……。ああ、血が出ているではありませんか」
手袋をしたジョシュアの手がリンゼイのそれを握る。わずかにジンジンと痛かった傷口も、その行動に一気に吹き飛んでしまう。
「た、大したことありません」
いつもは見上げる彼の美貌が跪いているため、目線が下がり距離が近い。彼がつける上品なパルファンが鼻腔をくすぐり、頭がくらくらしそうだ。
そんなリンゼイをもっと狼狽えさせる行動をジョシュアはした。
血が滲む指を形いい唇に押し当てたのだ。しかもそのまま指を咥えられ、リンゼイは息を呑んだ。
指先に感じるジョシュアの熱がリンゼイの全身に伝達したよう身体中が熱くなり、心臓はこれまでになく煩く、そしてせわしなく鼓動し、頭は沸騰しそうだ。
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