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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり




「ジョ、ジョシュアさんっ!」


 これ以上指を咥えられたままでいると本当に卒倒してしまい、ジョシュアに見苦しい姿を晒す羽目になりそうで、リンゼイは熟れたリンゴのような顔で小さく叫ぶ。


「あ……申し訳ありません。つい……」


「い、いえ……」


 慌てふためいているのはリンゼイだけのようで、ジョシュアは眉ひとつ動かさずすくと立ち上がる。


「薬箱をお持ちしますので、少々お待ちください」


 と言って一揖し、城の方へと歩いて行ってしまった。


 ひとり残されたリンゼイは、先ほどジョシュアが触れた方の手の甲に他方の手を重ね、一向に騒ぐのをやめる様子のない胸の前に置く。


 つい、だとしても咄嗟だったとしても、理由などリンゼイにとってさほど問題ではなく、ジョシュアの唇が自分に触れたという事実だけがすべてだった。


 ドキドキしながら微かに血の滲む指を自分の唇に押し当てていた。


 キスの意味も知らない無知で無意識の行動。


 サアッと一際庭に強く風がひとつ吹き、ハッとなったリンゼイはどうしてかその行動がとてもはしたなく、恥ずかしいものだと感じ、辺りに誰もいないか確認してしまった。






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