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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密




「お、王妃さま……! あの、これは……も、申し訳ありません!」


 王子に駆け寄り、彼を起こす王妃に向かい泣きそうな顔で謝る。だが王妃は夫人の声が耳に入っていないようで、王子を気遣っている。


「レオ、大丈夫? 見せて」


「母上……痛い、です」


 王子は呆然とした顔で殴られた頬を抑え、口元には赤い血が滲んでいた。ジョシュアも呆然としてその様子を地面に膝をついた状態で眺めていた。


「まぁ! 血が出てるじゃない!」


「これは……あの、違うんです……。私はただ……この者を……」


 しどろもどろで言い訳をする夫人。王族に傷をつけようものなら手打ちになっても文句は言えない。普段威張りくさっている彼女がこうも震えているのはそういうわけだ。


「申し訳ありません! どうかお赦しください……」


 王妃はなぜこうなったのか事情も解らず困惑を浮かべ、王子と夫人を交互に見ている。ややあってこう言った。


「レオ、なにがあったのかわからないけど、あなたはどうしたい? 叩かれたのはあなたよ。あなたが決めなさい」


 幼子にそんな判断を任せるなど、無茶だと思った。いくら彼が将来この国を背負う立場であっても、幼すぎるのだ。






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