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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
ジョシュアは瞬く間に小さな手荷物と一緒に、王妃や王子が乗ってきた馬車に詰め込まれてしまった。男爵一家に見送られる際、事情が呑み込めていない男爵は呆けており、夫人とロイドは悔しそうな顔で、家令は良かったとでも言いたげな顔で微笑み頷いていた。
だが誰よりも驚き、置かれた立場が理解出来ていないジョシュアは、世話になった家令にまともなお礼を言えもせず、夫人に恨み言のひとつも零せず馬車に乗せられてしまった。
ひとつ解るのは、ほんの少し前に出逢ったばかりのこの小さな王子に自分は買われたということだ。その王子はと言えば、殴られたところが痛むのか、子供らしいふっくらとした頬を押さえて擦っている。
「ごめんなさいね、慌ただしくて」
王妃は王子の頭に手を乗せ、髪を撫で下ろす。
「それにしても、レオにはひやひやさせられたわ」
「母上ならきっとわかってくださると思ってました!」
「そりゃあ母親ですもの。地面で倒れていたときには心臓が止まるかと思ったけど、なんとなく状況は掴めたし、こうなるだろうと思ったわ」
ジョシュアの停止していた思考が二人の会話の合間にゆるゆると回転を始め、そしてある考えに至る。
「まさか……わざと庇われたんですか」
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