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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
王子は眉を顰め、小首を傾げて宙を見る。それからジョシュアのほうを見て、首を振る。
「わざとじゃなくて、勝手に身体が動いてたんだ」
たった4歳の子供が年上で、しかも初対面のジョシュアを庇うために勝手に身体が動くなんてあるのだろうかと、信じられない気持ちでいると、彼はこう続ける。
「殴られたのはご……ご……」
「誤算?」
「そう、それです、母上! 誤算だったけど、チャンスだと思った。お前が気に入ったから傍に置きたくなった。それだけだ!」
それだけって……。だが解せない。
「王子さまと私が逢ったのはつい先ほどです。なぜ私のような者を気に入られたんですか」
「その手の傷、本当は夫人にやられたんだろう? でもお前は最後まで言わなかった」
「それだけ……ですか」
王子は嘘偽りないキラキラとした瞳をジョシュアに向け、こくんと大きく頷く。
「では奥様を手打ちにすると言ったのは、私を引き取るために……?」
あの僅かな時間で……それも夫人から殴られた直後だというのに、ジョシュアを引き取る策を講じたというのか? たった4歳の子供が?
ジョシュアはにわか信じ難い気持ちで眼の前の王子を見詰める。
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