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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
ジョシュアの気持ちを知ってか知らずか、手に顎を乗せる王妃が言う。
「ほんっと、レオったらこういう悪知恵だけはよく働くのよね。誰に似たのかしら?」
あとでジョシュアは知ることになるが、王子は王妃の性質をとても引き継ぐ性格だった。王妃は本気で誰に似たのか解らなかったのか、それともとぼけていただけなのか、結局は解らず仕舞いだった。
「さあ、お話はこれくらいにして。レオ、もういいわよ」
「なにが……ですか?」
「ずっと泣くの我慢していたんでしょ? もう泣いていいのよ」
「な、泣きません! あれくらいのことで……」
強がる王子だったが、その双眸には涙が浮かびだす。
「じゃあこうすれば見えないわ。だからいいのよ。よく頑張ったわね」
王妃は王子を胸に引き寄せ、顔を隠してしまう。すると王子は小さな肩を震わせ、声を押し殺して泣き出した。
ジョシュアは瞠目し、王妃の胸に抱かれ、その小さな身体を震わせる王子を見詰めた。
彼が泣くのは当然だ。彼はジョシュアを殴ろうとした夫人の、渾身の力で頬を叩かれたのだ。どれだけ悪知恵が働こうと、まだたった4歳なのだ。それなのにずっと我慢し、気丈に振る舞っていた。あの小さな身体で耐えていたのだ。
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