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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
ジョシュアは初対面の小さな王子が身を挺して庇ってくれたことを思い、喉が詰まる。なぜか解らないが、両親が死んだと聞かされて以来冷え切っていた胸が熱くなった。
「あら? あなたもどこか痛いの?」
「え……?」
王妃が気遣わしげにジョシュアを見遣る。知らぬうちに流れていた温かな涙が頬を伝い、膝の上に置いてある拳に滴が一粒落ち、ようやく自分が泣いていると気づく。
慌てて涙を拭うが、どういうわけか止めどなく溢れてくるのだ。両親が死に、けれどキャンディスが生きていると聞かされたときでさえ泣けなかったのに。ずっと張ってきた気が緩んだのだと、あとから冷静になり分析はしたが、このときはただただ涙が溢れてきた。
「ほら、あなたもこっちへいらっしゃいな」
「い、いえ……大丈夫です、大丈夫ですから……」
「いいから、いいから! ほら、ね」
涙を拭うジョシュアを強引に自分の横に座らせた王妃は、ジョシュアも引き寄せ頭を撫でる。
「あなたも頑張ったわね」
優しく落ちてくる声にまた涙が溢れ、王妃の胸で泣く王子がジョシュア袖口を握る手に、また胸が熱くなった。
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