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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密




 レオナルドの傍で何年も働く傍ら、一日たりとも忘れなかったのは妹のキャンディスのことだ。


 ジョシュア一人で探すといっても限度がある。仕事に追われているのもあるが、レオナルドの執事になるため覚えることが多くあるのだ。自由な時間が限られており、尚且つジョシュアが父と別れたのはもう何年も前で、子供だったジョシュアには父の交友関係がまったく解らなかった。


 ところが突然キャンディスの居所が解ったとレオナルドから告げられたのは、今からちょうど2年ほど前。当時レオナルドは私邸を構えたばかりで、真新しい家具が据えられる執務室にジョシュアは呼ばれ、彼からこう言われた。


「遅くなってすまなかった。やっとお前の妹、キャンディスの居所が解った」


「な……!? 今、なんとおっしゃいましたか?」


「キャンディスがどこにいるか解った、と言ったんだ」


 重厚な執務机の向こう側で革張りのゆったりとした椅子に腰掛けるレオナルドをまじまじと見詰める。


 キャンディスの居場所が解ったのは飛び上がるほど嬉しい。だがそれ以上に彼がキャンディスを探していたのを驚いていた。


「知っておられたのですね……」


「ああ。今まで黙っていて悪かった」




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