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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
レオナルドが言うには、ジョシュアが王城に来てから暫くして、元伯爵子息だというのを聞かされたらしい。レオナルド自身はジョシュアがどこの誰で、過去になにをしていようが構わなかったらしいが、周囲の大人たちはそういうわけにいかなかったのだ。
当然だ。レオナルドは一国の王子だ。それも継承権第一位を持つ、高貴な身分なのだ。レオナルドが気に入ったからといって、王城という場所はどこの誰とも解らない者を働かせはしない。
そこで密かにジョシュアのことを探らせ、彼が元伯爵家の血筋を引くものと判明し、更には行方知れずの妹がいることも突き止めたのだ。
「──お前のことだ。必ずキャンディスを探していると思った。だがジョシュア一人では手詰まりになるとも思った。俺の協力を素直に受ける性格でもないし、何よりお前自身、身分を隠したがっていた。違うか?」
その通りだった。彼の傍で仕えるには、身分は邪魔なものでしかなかった。
ジョシュアの手に嵌められる手袋を渡されたときから……いや、彼が王妃の胸で痛みに震えて泣いている姿を見たときから、彼に自分のすべてを捧げ生きていこうと決めていた。
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