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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密



 それからまた月日は経ち、今から半年前のこと。


 とある夜会に出席したレオに付き添い会場となる邸で待つように言われた部屋は、人の行き来しない角部屋ながらも、いつも控えている部屋よりも豪奢だった。


 変だな、と思いつつもここしか空き部屋がなかったのだろうと納得し、夜会が終わるのを待っていると、人目を忍ぶようにこっそりと入って来た一人の女性がいた。


 最初は邸で迷い、入る部屋を間違えたのだろうと思ったが、ジョシュアを見て涙を浮かべている彼女を眺めているうち、彼女こそずっと追い求めていた人だと感じた。


 金に近い淡い茶色の髪、タンザナイトを思わせる緑の瞳。


 たった一度きりしか逢っていない。それも生まれたばかりの頃。だけどすぐに解った。


「お……兄さま……。ジョシュアお兄さまでしょう?」


 立派に成長したキャンディスに震える声で問われ、思わず目頭が熱くなり、掌で眼を覆う。すると彼女は堪らずジョシュアの胸に飛び込んできた。


 お節介でどうしようもなくお人よしな主がジョシュアにまた黙って手を回したのだ。この上なく素晴らしいサプライズを、キャンディスが社交界デビューする日に用意していたのだ。




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