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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
「だって私だけが結婚して幸せになって、伯爵になるはずのジョシュアさんが使用人をなさってるなんて……」
どうやらキャンディスは兄の自分に引け目を感じているようだった。
だがキャンディスに逢え、しかも結婚すると聞かされ、この上なく嬉しくて自分も幸せだから気にしなくていい、と諭す。
「キャンディス様のお耳にも私との噂は届いているでしょう? これ以上逢えば、お相手の方にも誤解され、破談されかねません。そうすればご両親も哀しまれるでしょう。もう逢うのはこれきりにしましょう」
更に諭すも、彼女は納得しなかった。
自分たちは悪いことはしていない。誰のことも裏切るような真似はしていないからと。
けれど二人の関係を公に出来ないのもまた事実。侯爵が法に背き、あらゆる手を使いキャンディスを実の娘として育ててきたからだ。
二人が兄妹と知られれば侯爵だけでなく、黙認しているレオナルドの立場も危うくなる。だから再三に渡りキャンディスを説得してきた。
ジョシュアを侯爵の養子に、という話も出たが、もちろん断った。レオナルドにこの先も仕えていきたい意思が固かったからだ。
そして──。
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