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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
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「そして、あの夜会の日……リンゼイ様が私とキャンディスが一緒にいるのを目撃された日、ようやく説得することが叶ったのですが、使用人が呼びに来てしまったため、ハンカチーフをお渡しできなかった、というわけです」
話し終わり、ジョシュアはふぅと息を吐く。
リンゼイは彼になんと言葉をかけていいか解らず、ただ彼の辛かった過去を思い、涙する。
「泣かないでください。今、私は本当に幸せなんです」
「じゃあもう男爵夫人への恨みは……?」
ジョシュアは緩慢に首を横に振る。その表情はとても穏やかだ。
「いいえ、ございません。レオ様は良くも悪くも人を振り回される方です。あの方の傍で目まぐるしい日々を過ごしているうちに、恨みなどどこかへ飛んで行ってしまいました」
良かった、と頷きながら、リンゼイはレオナルドへ感謝せずにいられない。もし彼とジョシュアが出逢っていなければキャンディスと逢うことも叶わず、恨みを一生抱いて生きて行くことになっただろう。
こんなにも優しくて温かな人が、そんな風に生きていって欲しくない。
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