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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
止まっていた涙がまた溢れてくる。嬉しくて、嬉しくて。今度は夢なんじゃないかとさえ疑ってしまうくらい心が満たされる。
「本当……なんですよね? 本当にジョシュアさんが私を……」
「ええ、本当です。お疑いでしたら何度でも言います。私はあなたを愛しています」
「……ッ」
こんなにも幸せなことがあるだろうか。ずっと想ってきた相手に愛される日が来るだなんて。夢だったらいつまでも醒めず、眠り姫にでもなってしまいたい。
「いつ……からですか」
「お聞きになりたいですか」
涙で滲むジョシュアに向かい、コクコクと頷く。すると困ったような顔でジョシュアは教えてくれる。
カンターヌで逢った頃からリンゼイの気持ちには気付いていたが、一時の憧れかなにかだろうと思い、見て見ぬふりをしてきた。だが子供だったリンゼイが美しく成長し、ジョシュアの前に現れ、正直心を乱された。
だがリンゼイは一国の王女であり、リンゼイとて自分の立場をわきまえているだろうから、特別な関係になることも、自身も特別な感情を抱くこともないだろうと思っていた。
けれどあの日。リンゼイがジョシュアに告白をした日。
また見て見ぬふりをしてリンゼイに諦めさせようとした。泣かせてしまうのを覚悟で。けれど予想に反し、リンゼイは泣くことはせず諦めないと宣言した。
思えばあの時リンゼイに心を完全に奪われたのだとか。
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