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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
「それでも私が距離を保っていれば、リンゼイ様も帰国される頃には気持ちに整理をつけられるだろうと思っておりましたが……。薬まで使われるだなんて、あなたは本当に予想外なことばかりされる」
「あ、あれはその……反省してます」
媚薬のことを持ち出され、すごく居心地が悪くなる。
「いいえ。あなたが強引な手段に出なければ、私は自分の気持ちに眼を背けたままでした。それに逃げ出そうと思えばいくらでも逃げ出せてました。理性とて繋ぎ止められておりました。でも……薬から逃げられても、首を跳ねられてもいいからあなたを抱いてしまいたいという本心からは逃げられなかったんです」
ジョシュアそう言って優しく微笑み、リンゼイの頭に手を回し、そっと引き寄せる。
それは触れ合うだけの口付けだった。
深く、甘いものではないのに、背筋がゾクゾクと戦慄く。頭の芯まで痺れそうだ。
ジョシュアと気持ちが通じ合い、初めての特別なキスにリンゼイは涙して悦ぶ。
4年の歳月が報われた瞬間を、リンゼイはきっと一生忘れないだろうと思った。
名残惜しげに唇を離したジョシュアは、リンゼイの髪を撫でる。
「この先はまた今度。私は行かなければならない場所があります」
ジョシュアはなにか決意した表情で立ち上がると、お仕着せをクローゼットから取り出し、袖を通した。
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