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王女様の不埒な暴走
第9章 王女は甘いひと時に浸る




 ジョシュアは上体を倒し、腕を伸ばしてリンゼイの手を握る。


「それにそれは私のセリフだと思いますよ。カンターヌの妖精が私の恋人になるだなんて、夢にも思いませんでしたから」


 彼がそんな風に思ってくれているだなんて、嬉しくて羽が背に生えたようにフワフワした心地になる。そのまま飛んで行って彼の胸に飛び込みたくなるが、馬を繰る馭者に気付かれてはいけないと自制する。


 馭者と言えば、とリンゼイはふと思い出し、気になっていたことを口にする。


「ここ最近、馭者の方が代わられましたよね。前の方はどうかなさったんですか」


 レオナルドが私邸に戻ったと同時期に馭者が代わったのだ。前の馭者は無愛想で、リンゼイに軽く頭を下げる程度だった。だが今の馭者は帽子まで取り、笑顔で出迎えてくれる。


「ああ、気付かれておいででしたか。彼はレオ様の私邸で働く馭者ですよ」


「殿下の? わざわざ王城まで私の送迎に来てくださってるんですか」


「はい」


「でも殿下の私邸の方なら、殿下やアリエッタ様の送迎をされるんじゃないですか」


「馭者は他にもおりますので、ご心配なく」


 それもそうか、と納得はするが、王城にも多くの使用人がおり、馭者も何人か雇っているはずだ。わざわざレオナルドが雇う者を寄越している理由が解らず、首を捻る。






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