この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
王女様の不埒な暴走
第9章 王女は甘いひと時に浸る
ジョシュアは上体を倒し、腕を伸ばしてリンゼイの手を握る。
「それにそれは私のセリフだと思いますよ。カンターヌの妖精が私の恋人になるだなんて、夢にも思いませんでしたから」
彼がそんな風に思ってくれているだなんて、嬉しくて羽が背に生えたようにフワフワした心地になる。そのまま飛んで行って彼の胸に飛び込みたくなるが、馬を繰る馭者に気付かれてはいけないと自制する。
馭者と言えば、とリンゼイはふと思い出し、気になっていたことを口にする。
「ここ最近、馭者の方が代わられましたよね。前の方はどうかなさったんですか」
レオナルドが私邸に戻ったと同時期に馭者が代わったのだ。前の馭者は無愛想で、リンゼイに軽く頭を下げる程度だった。だが今の馭者は帽子まで取り、笑顔で出迎えてくれる。
「ああ、気付かれておいででしたか。彼はレオ様の私邸で働く馭者ですよ」
「殿下の? わざわざ王城まで私の送迎に来てくださってるんですか」
「はい」
「でも殿下の私邸の方なら、殿下やアリエッタ様の送迎をされるんじゃないですか」
「馭者は他にもおりますので、ご心配なく」
それもそうか、と納得はするが、王城にも多くの使用人がおり、馭者も何人か雇っているはずだ。わざわざレオナルドが雇う者を寄越している理由が解らず、首を捻る。
.