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王女様の不埒な暴走
第9章 王女は甘いひと時に浸る




 ジョシュアがポットからバラの描かれるカップに紅茶を入れると、部屋がダージリンの香りで満たされる。このところはリンゼイが勧めなくてもジョシュアも二人きりのときは同席してくれるようになった。


 人目がある場所でも堂々とこうしてジョシュアとお茶を飲めたらいいのに。


「まだ落ち込まれているんですか」


「……いえ、次はいいお返事いただけるといいですね」


 リンゼイよりジョシュアのほうが辛いはずだ。こんな時こそ彼を支えなければならない。


「そうですね。私もレオ様もお一人目で上手くいくとは思っておりませんでしたから。先方も突然の話で混乱されて当然でしょうし」


 ジョシュアの決意が固まっていないのに、話を進めるわけにもいかず、レオナルドは養子先の目星だけを立てていたようだ。


「でもジョシュアさんほどの方なら、きっとどなたか養子に迎えたいとおっしゃってくださる方はいらっしゃいますよ!」


 ジョシュアはレオナルドの傍に仕えているだけあり、他国の情勢や本国の事情にだって詳しい。爵位存続のために彼を欲する者はいくらでもいるだろう。


「リンゼイ様にかかると、私は聖人にでもなった気分になりますね」


「気分じゃなくて、私にとったら本当にそうなんです」


 リンゼイが胸を張って言うと、ジョシュアはクツクツと苦笑した。




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