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王女様の不埒な暴走
第9章 王女は甘いひと時に浸る
「ち、ち、ち……違います! 私、そういうつもりでは!」
熟れたリンゴのような顔でジョシュアに反論する。
ジョシュアから告白を受けた日から口づけはおろかまともに触れ合っておらず、寂しいという思いはあったが、誓って不埒なことがしたくて誘ったわけではない。
「おや、そうでしたか。馬車に乗り込む折、馭者の顔を確認されておいででしたので、てっきりそのようなことをなさりたいのかと」
「あれは! あ、挨拶してただけです!」
「そうですか。それは残念」
「残念!?」
「ええ、そうです。前に申し上げた通り、私はレオ様と違いこのような場所で不埒な真似をするつもりはございませんが、リンゼイ様のお誘いでしたらいくらでも乗るつもりですよ」
涼しい顔で追い詰めるのはやめてほしいと、本気で思ってしまう。
「誘ったわけじゃないんです! ただその……手を握ったりしたいなって……」
視察先に着いてしまえば、また他人のようなよそよそしさで接しなくてはいけないのだ。誰にも咎められず、誰の眼も気にしない少ない時間をせっかく得たのだから、恋人らしく接したかっただけだ。
リンゼイがもじもじと言うと、ジョシュアの口から深い嘆息が漏れた。
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