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王女様の不埒な暴走
第9章 王女は甘いひと時に浸る
「申し訳ございません。リンゼイ様にひとつ嘘を申し上げておりました」
白亜の邸を眺めるリンゼイに、ジョシュアは胸に手を当て軽く頭を下げる。
「嘘?」
「はい。建前上、本日は視察ということになっておりますが、リンゼイ様をこちらの邸にお連れするのが目的でした」
ジョシュアの説明にリンゼイは得心がいかず、戸惑う。
「では今日は視察ではない、ということですか」
ジョシュアは懐かしそうに眼を細め、小さな邸を眺める。その横顔にリンゼイはハッとなる。
「もしかしてここって……」
「お察しの通りです。ここは私の父が所有していた別邸です」
ジョシュアが語るには、この別邸だけはジョシュアの父は最後の最後まで手放さなかったそうだ。だが領地が人手に渡ると同時に、この邸も売られてしまったが、ジョシュアの生い立ちを知ったレオナルドがジョシュアに秘密で買い戻したそうだ。
「男爵邸に奉公に行く前には、両親と毎年ここで休暇を過ごしました。リンゼイ様が帰国される前に一度お連れしたかったので、レオ様に無理を言って視察ということにしてもらい、私はレオ様の名代としてご同行したというわけです」
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