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王女様の不埒な暴走
第9章 王女は甘いひと時に浸る
ジョシュアの背に両の掌と頬を添え、リンゼイは瞼を伏せる。そこに広がるのは暗闇ではなく、憧憬だ。
彼と仲良く寄り添う傍らで、子供たちが元気な声を上げて走り回る。絶えない笑い声と穏やかな空間。そんな光景が眼裏に見えてくるようだ。
「またここに連れて来てください」
「はい、必ず」
「それでいつかこの場所で私たちの子供を遊ばせましょう」
「え?」
ジョシュアが首を捻り振り返る気配に、リンゼイはパチリと眼を開ける。緩慢に視線を上げた先には、眼を丸くするジョシュアがいた。
すると彼はこの上なく深々と嘆息する。
「つい数時間前にあれ程ご注意申し上げましたのに」
険しい顔で言われ、リンゼイはなにか不味いことでもしただろうかと己の言動を振り返り、ようやく考え至る。自分がどれだけ大胆なことを口走っていたかを。
「あ、いえ、その……違うんです! いえ、違わないんですけど、そうじゃなくて!」
肌という肌を染め上げ弁明するリンゼイにジョシュアは向き直る。
「この後、裏の森や川辺などにご案内する予定でしたが、すべてキャンセルいたします。リンゼイ様はこちらで少々お待ちください」
ジョシュアはなぜか不機嫌そうにリンゼイに言い置き、どこかへ行ってしまった。
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