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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




「王女。落ち着いてください」


「でも……でも! 万一ジョシュアさんが手打ちになるようなことになったら、私……!」


 恐ろしい光景が脳裏に浮かび、ついに堪えきれなくなった涙がドレスのスカートに零れ落ちた。


 レオナルドがそっとリンゼイの手を握り、背中を擦る。


「焦っておいでなのは、婚約のことですね」


「な……んでそれを……」


 リンゼイは泣き濡れる双眸をレオナルドに向ける。


 婚約の話はレオナルドやジョシュア、それにライラにさえ話していなかった。カンターヌでも身内しか知らない話だ。それなのになぜレオナルドは知っているのだろうか。


「国王が私に王女を頼まれたのは、我が国で王女に男が近寄らないようにするためでした。すでに婚約の話が出ているため、娘には指一本たりとも触れさせぬようにとのお達しがあったんです」


「お父さまが……。ジョシュアさんは? ジョシュアさんもこのことをご存知なんですか?」


「ええ。私が話しました」


 リンゼイは言葉を失う。


 ジョシュアが知っている。彼がその話をどんな気持ちで受け止め、どう思っているのか計り知れず、リンゼイは瞳を揺らした。





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