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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう



 ビロード張りのふかふかなソファーに姉と並んで座り、リンゼイが泣き止んでからも姉は手を握ったまま。大好きな姉が隣にいるだけで、不安な気持ちが軽くなる。


「聞いたわ。スチュワートと婚約が決まったそうね」


 ──そう。リンゼイが父から唐突に告げられたのは、スチュワートとの婚約の決定だった。


 大人になった今も変わらず、スチュワートに対する苦手意識は未だ強い。だがリンゼイが彼との婚約を拒絶する理由はそれだけではなかった。


「お父さまも困ったものね。ちょっと見ていればリンゼイがスチュワートのこと嫌っているってわかるものなのに。だけどね、リンゼイ。お父さまだって本当にあなたのことを考えて、この婚約をお決めになったのよ」


「……はい」


 婚約を言い渡された日、あまりの突然さに自失し、暴言を吐いてしまったのはリンゼイも反省していた。けれどそれを謝り、折れてしまうと、婚約も進められてしまいそうで父には謝れていないのだ。


「スチュワートは昔っからあなたに一途で、彼ならリンゼイを幸せにしてくれると思ったのよ。それに……」


 姉は困ったような、それでいて悪戯っぽい微笑みを浮かべる。


「“男嫌い”のリンゼイには幼馴染のスチュワートしかいないというのが、お父さまの考えよ」






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