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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




 だがジョシュアは笑いはせず、リンゼイの手を握るとまた椅子に腰を下ろす。


「これだけでよろしいですか」


 ジョシュアに首を傾げて訊ねられ、リンゼイは逡巡してから口籠りつつ言う。


「じゃあ……おやすみのキス……もしてください」


 リンゼイのジョシュアの手を握る力が少し強まり、彼も同じだけ返す。


 彼が腰を浮かせる気配にリンゼイはドキドキとしながらそっと瞼を伏せる。ジョシュアはリンゼイに覆い被さるように手をついて、彼女の額に口づける。


 唇が額から離れ、リンゼイは不満そうにジョシュアを見上げる。


「どうしました?」


「だって……」


 欲しかったのは額への口づけじゃない。彼だってきっとリンゼイの気持ちを解っているはずなのに、と唇を尖らせる。


「一般的なおやすみのキスは額へだと認識しておりましたが?」


 それは幼子へするものだ。恋人同士がするものじゃないのに。


 リンゼイは上掛けを眼の下まで引き上げ、また恨めしそうにジョシュアを見上げた。


「ジョシュアさん、時々意地悪です」


 拗ねたようなリンゼイの声に、ジョシュアはフッと笑う。







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