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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……
まだ外は薄闇に包まれ、ようやく鳥たちが目覚める時間帯。
「……ま、リンゼイ様。起きてください」
抑えた低い声色と揺り動かされる感触に、リンゼイの瞼がふるりと揺れる。だがなかなか起きる気配のないリンゼイに、その声の主は焦りを滲ませる声でさらに呼びかける。
「リンゼイ様、緊急事態です。眼を醒ましてください」
「ん……」
肩を揺すられ、リンゼイは眠い眼を擦り、霞む視界にジョシュアを捉えた。
「ジョシュア……さん?」
もう朝が来てしまったのか、と微睡む頭で周りを見るも、朝とは思えない暗さにリンゼイは訝しげにジョシュアを見遣る。
「お疲れのところ起こしてしまい申し訳ありません。ですが緊急を要する事態が発生しましたゆえ、お赦しを」
ジョシュアの尋常ならざる様子に、ようやく眠気を引き摺っている場合でないと悟り、リンゼイは重たい身体を振り払い、起き上がる。
「どうかされたんですか」
「それが……」
ジョシュアは苦しげに眉を寄せ、視線を落とす。そして唇を引き結び、端的に告げる。
「我々はカンターヌへ行けなくなりました」
「……え?」
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