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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……
カンターヌへ行けない? 我々とは、ジョシュアとレオナルドということなのか?
レオナルドがカンターヌへ行けないとなればジョシュアや自分はどうなるのだ……と、一瞬責めるような思いが脳裏を掠めたが、彼らがなんの理由もなく、そんなことを言い出すはずはないと思い直す。
「何があったか話していただけますか」
「アリエッタ様がご実家から出て行かれ、その後行方知れずになっているようです」
「アリエッタ様が!?」
彼女はたしか、リンゼイに同行してくれるレオナルドがいない間、レオナルドの私邸を離れ、実家であるザキファス公爵邸に身を寄せると聞いていた。
その彼女がなぜ行方知れずなどという有り得ない事態に陥っているのだろうか。
「ええ。先ほど公爵夫人からレオ様の元に手紙が届けられました。ですが詳しい状況などが掴めておりません。それで……」
ジョシュアは辛そうに眼を閉じ、それ以上言葉を紡げないようだった。リンゼイもまた強く瞼を閉じる。
彼がどれだけ辛いか解る。主人の、そしてその恋人の危機に駆けつけない執事はいない。けれどリンゼイのことも大切に想ってくれている。ふたつの大切な存在に挟まれ、苦悶しているのだろうことが、リンゼイには伝わっていた。