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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




 リンゼイは閉じていた瞼を開き、強い眼差しをジョシュアに向ける。


「……ジョシュアさん。行ってください。行って、必ずアリエッタ様を見つけて差し上げてください」


「リンゼイ様……」


 頼りなさげにジョシュアのサファイア色の双眸が揺れ、謝りかける彼を制する。


「謝らないでください。ジョシュアさんは何か悪いことでもしましたか?」


 口許に微笑みを湛え、リンゼイは彼に諭す。


「殿下はジョシュアさんにとって大切な方ですよね? その殿下の大切な方も同じくらいお慕いされているはずです。ジョシュアさんにとって大切な方は私の大切な方でもあります。私は行けませんが、私の分まで殿下の力になって差し上げてください」


 レオナルドはこれまで自分たちのためにとても良くしてくれた。アリエッタもリンゼイがレオナルドの私邸に行った際、退屈しないように色々と気を配ってくれた。


 自分のために、これ以上彼らを足止めしては、ジョシュアとの未来が守れても、きっと一生後悔する。


 本音を言えば、これから先どうなるかも知れない未来に恐怖はある。父を一人で説得できるのか、スチュワートとの婚約を白紙に戻せるのか……。


 けれど戦うと決めたから、リンゼイは一切の不安をジョシュアに見せず、そっと彼の頬に触れた。





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