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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




「私なら心配いりません。一人でも父を説得してみせます。だから行って、ジョシュアさん」


 ジョシュアと暫し視線が交わる。彼はまた瞼を閉じ、次開けたときにはリンゼイと同じく強い眼差しだった。


 美しく気高いサファイア色の瞳にリンゼイが映るが、すぐにそこからリンゼイの姿がなくなる。


 頬に触れていたリンゼイの手を引き寄せ、自らの腕にリンゼイの細い肢体を閉じこめたからだ。


「リンゼイ様。必ず……必ずお迎えにあがります。ですからそれまで私以外の男に、この身体に指一本たりとも触れさせてはなりませんよ」


「ジョシュアさん……」


 初めて彼が約束をしてくれた。リンゼイを迎えに来ると。


 泣きたくなるのを堪え、彼の広い背に腕を回し、肩口に顔を埋める。


「はい。お約束します。ジョシュアさんをずっと……ずっと待っていますから」


 温かく、広い胸に抱かれ、未来を誓い合う。


 固い絆を信じ、けれどどこまでも高い壁に阻まれ、脆さを孕んでいるものだと知りつつ、二人はそれぞれの険しい道へ進むため、一時離れることを決めた。







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