この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……

「ありがとうございます、殿下。私は私の出来ることを致します。ですから殿下はアリエッタ様のことだけ考えてください」
「ありがとう、王女。では私はこれで失礼します。ジョシュア、先に行ってるぞ」
レオナルドは矢継ぎ早に言い置き、部屋を出ていった。
惹かれ合うようにジョシュアと眼と眼が合う。もう言葉は必要なかった。
口づけの予感に、リンゼイは瞼をそっと落とす。食むような口づけに、身体が──心が震える。
口づけする時間はとても長く感じられたが、実際はほんの僅かだ。離れがたい気持ちが長く感じさせていただけ。
また強くジョシュアに抱き締められる。寂しさを、不安を拭い去るかのように、分かち合うかのように、互いの身体がひとつになるほど強く抱かれる。
名残り惜しげにリンゼイを離し、ジョシュアはひとつ息を吐く。
「リンゼイ様、道中お気を付けて」
「……はい。ジョシュアさんも」
お互い小さく頷き合う。
「お見送りは結構です」
「でも……」
「寝起きのお姿をあまり多くの者に見せたくはないんです」
「それも男性の心理というものですか?」
流れる物悲しい空気を払い去りたくて、リンゼイはクスリと笑うと、彼もフッと笑んだ。
「私のレッスンの賜物ですね」
ジョシュアは最後にまたリンゼイに笑いかけ、一揖して身を翻した。
.

