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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




「ありがとうございます、殿下。私は私の出来ることを致します。ですから殿下はアリエッタ様のことだけ考えてください」


「ありがとう、王女。では私はこれで失礼します。ジョシュア、先に行ってるぞ」


 レオナルドは矢継ぎ早に言い置き、部屋を出ていった。


 惹かれ合うようにジョシュアと眼と眼が合う。もう言葉は必要なかった。


 口づけの予感に、リンゼイは瞼をそっと落とす。食むような口づけに、身体が──心が震える。


 口づけする時間はとても長く感じられたが、実際はほんの僅かだ。離れがたい気持ちが長く感じさせていただけ。


 また強くジョシュアに抱き締められる。寂しさを、不安を拭い去るかのように、分かち合うかのように、互いの身体がひとつになるほど強く抱かれる。


 名残り惜しげにリンゼイを離し、ジョシュアはひとつ息を吐く。


「リンゼイ様、道中お気を付けて」


「……はい。ジョシュアさんも」


 お互い小さく頷き合う。


「お見送りは結構です」


「でも……」


「寝起きのお姿をあまり多くの者に見せたくはないんです」


「それも男性の心理というものですか?」


 流れる物悲しい空気を払い去りたくて、リンゼイはクスリと笑うと、彼もフッと笑んだ。


「私のレッスンの賜物ですね」


 ジョシュアは最後にまたリンゼイに笑いかけ、一揖して身を翻した。







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