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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう


 リンゼイは決して男嫌いなどではない。確かにスチュワートのような乱暴者が幼い頃から身近にいたせいで、男性に苦手意識はある。


 けれどダンスの申し込みを断り続けているのは、今尚リンゼイの心を占めるただ一人の男性──ジョシュアがいるからだ。


 ダンスともなれば男と身体を密着させなければならない。指を絡ませ、腰に手を回され。そうして音楽が一曲終わるまで離れられない。ジョシュア以外の男とそんなことをしたいとどうしても思えないのだ。





「ねえ、リンゼイ。王族や貴族の家に生まれた者は、意にそぐわなくとも親の決めた相手と結婚するのが通例。それを撥ね退けても、リンゼイは気持ちを寄せる彼と一緒になりたいのよね?」


 姉も親の薦める相手と結婚した。しかし彼女曰く、結婚してから夫となった男性と恋愛しているらしく、一男一女をもうけ、結婚生活に不満はないらしい。


 リンゼイもスチュワートとそうならないとは言い切れないが、それは心にジョシュアがいない場合だ。彼がリンゼイの心に住み続けている限り、スチュワートと恋愛を出来る気がしない。


「一緒になりたいかと言われると……わかりません。でも彼のことがどうしても忘れられないんです」


「そう……。気持ちを伝えられないまま離れ離れになってしまったものね。それに只でさえ昔っからリンゼイはスチュワートのこと苦手だったのに。結婚したくないのもわかるわ。彼が夫になれば、夫婦の契りもスチュワートとしなければならないし……」


「……っ!」








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