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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




「父上もリンゼイも……あとイレーネも落ち着いて」


 兄が父とリンゼイの間に立つ。そして奪うように父から手紙を受け取り、ざっと目を通した。


「なるほど……。父上のお気持ちもわからなくはないですが、王太子殿下自らのご推挙を無下にするわけにもいかないでしょう」


「……」


「それに私のみたところ、リンゼイの意思は相当固いように思えます。強引に婚約を進めても、リンゼイが不幸になるだけです。父上とてリンゼイが不幸になるところを見たくはないでしょう?」


 黙りこくる父を兄が説き伏せる。


「ここは一旦レオナルド殿下がおっしゃる通り、その彼が父上に挨拶に来るまで待ちませんか」


「しかしな。お前たちも知っての通り、デニスとは古い仲だ。そのデニスにリンゼイが帰国したらすぐスチュワートと婚約させると約束をしたんだぞ」


 デニスとは、スチュワートの父ミルウッド伯爵の名だ。父と伯爵が旧知の仲なのは知っているが、勝手に進めた婚約話を持ち出されても困る。


「ですので求婚の話やリンゼイの気持ちは伏せ、延期してもらうんです」


「そんなものどうやって……」


「いくらでも言い訳はたちます。留学の疲れが出て、寝込んでしまったことにでもして、ね? さっきスチュワートの前で怒鳴ったのは、リンゼイのラインハルトでの成績があまりにも悪かったことに激怒した……というのは如何ですか?」


 兄がスラスラと言い訳を考え、それに対し父の考えも若干傾いてきているようだ。




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