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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




「な……なんてことかしら」


 姉はリンゼイの答えを受け、ますます頭を抱え込み愕然とする。


「私、てっきりリンゼイの好きな方ってレオナルド殿下だと……」


「ええっ!?」


 リンゼイは声を上げてからハッとなる。だから書斎で姉はああも驚いていたのか。


「あの……あの……聞いていいかしら? その相手って……どなた?」


 姉は薄々勘付いてきたのだろう。4年前、カンターヌに来た面々は王と王妃、そしてレオナルド以外すべて使用人や護衛だ。それもごくごく限られた人数。


 リンゼイも姉の勘違いに気付き、蒼白になる。


 姉や兄が協力的だったのは、相手がレオナルドと思っていたからだ。レオナルドならば父も手放しで喜んでくれたに違いない。それがたとえ旧友のミルウッド伯爵との約束を違えることになったとしても、伯爵子息と次期王であるレオナルドではあまりにも身分が違いすぎ、どちらを選べばよりリンゼイや王家にとっていいことか歴然としているからだ。


 リンゼイが言い淀んでいると、姉はあの時誰が来ていたかを思い出している。


「えっと……たしか……ああ、もう! 頭が混乱して働かない! 待ってよ…………あっ!」


 ブツブツと呟いたと思えば、姉は鋭く声を発した。






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