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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




「リンゼイ、間違ってたら言って? あの時たしかあなた……階段から落ちそうになったって言ってたわよね?」


 姉に優しく語りかけられ、リンゼイは喉をコクリと鳴らす。


「それを助けたのって……殿下の執事、だったかしら?」


 リンゼイはもう姉の眼が見ていられず、視線を彷徨わせる。


「当たり……? そうなのね!?」


 下唇を噛み、リンゼイは俯く。


 そのリンゼイを見て、姉は顔を両掌で覆い、上を仰いだ。


 暫し、気まずい無言が流れるも、両手から顔を出した姉は、肩が沈むほどの勢いで両手を乗せてきた。


「いいわ! こうなったら最後まであなたに協力するわ! とにかくすべて私に話して」


「お姉さま……。いいんですか? だって彼は……」


「いいのよ。乗りかかった船ですもの。どうせ私が加担していると知られれば、一緒に沈むのよ? それに彼……ええっと、名前はなんて言ったかしら」


「ジョシュアさんです……」


「そう、ジョシュア! 彼、なかなかいい男だったわ。使用人にしておくのは惜しいと思ってたのよね。リンゼイの恋人として顔は合格ね」


 姉は眼を眇め、片方の口角を持ち上げる。評価が顔なのがどうかと思ったが、それはともかくとしてリンゼイは姉に事のあらましを話して聞かせた。







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