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第10章 迫りくる刻、そして……

「なるほどね。じゃあ彼は生まれは貴族で、今は訳あって使用人をしているけど、殿下の協力で爵位を得るために動いている、と」


　ジョシュアの過去は伏せ、ライラに話したときとほぼ同じ内容を伝える。


「血筋も問題ないようだし、爵位を得られさえすればお父さまを説得できるかも……。あとはどのくらいお父さまが待ってくださるかが問題ね」


「はい……。さっきはお兄さまの説得もあり、折れてくださったけれど、そのお考えがいつまで続くか……」


「そうね。お父さまは短気で癇癪持ちで堅物なのが難点だから……」


　姉の散々な言いように場が和むが、けして父の性格は軽視できないものだ。笑ってもいられない。


「それにアリエッタ様のことも心配です」


「たしかに。どういう事情で行方をくらまされたかわからないけれど、難航するかもしれないわよ」


「なぜです？」


「だって、殿下はリンゼイとの同行するのを止めにして、血相変えて帰られたんでしょう？　つまり、アリエッタ様がそれだけ大切な存在だってことよ。ということは、いずれ妃に迎えられるおつもりなのよ。王太子妃になる者が失踪騒ぎを起こしたとならば、必ずどこかから反対されるわ。だから大事にせず、限られた人数で捜すはず」


　姉の言うことはもっともだ。国を挙げて捜しているならばいざ知らず、身内だけで捜しているなら、それなりに時間がかかるのも覚悟しておかなければならないだろう。






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