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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




「ご自分で殿下の元に戻られているといいわね」


 もう戻っているかもと甘い考えを抱いてしまっていたが、姉の話で不安が大きくなり、険しい顔付きで黙るリンゼイを姉が励ます。


「そうですね……」


 良からぬ者に連れ去られてはないだろうか、と悪い予感が過るが、リンゼイは首を振ってその考えを追い出した。


「アリエッタ様のことは殿下やジョシュアに任せるとして、リンゼイは彼が迎えに来るまで決してこのことを漏らさないように。でもお兄さまと私はすでに同罪だから、不安に思うことがあれば何でも話して」


「はい、ありがとうございます」


「お兄さまには私から伝えておくわ。ああ……お兄さまも驚かれるでしょうね」


 姉は苦笑いを浮かべる。


「でもお姉さまが勘違いしてくださらなかったら、私、ジョシュアさんと逢うことが叶わなかったと思うんです。お姉さまには申し訳ないけど、ちょっとだけ勘違いに感謝してます」


「それもそうね。使用人だと最初に知っていたら、協力しなかったと思うわ」


 顔を見合わせ、ふふっと二人で笑い合う。


 姉がジョシュアを使用人だと知っても変わらず協力してくれると言ってくれたことに心強さを覚え、けれど姉が帰ってしまってからも──たとえ兄の協力が得られず孤立してしまおうとも、ひとりで頑張ろうと誓った。





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