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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……




 兄はリンゼイの質問に腕を組んで考え込む。


「それが……まだ全容が掴めてないんだ」


「と言いますと?」


「いや、確たる証拠がないのに、不用意に口にすべきじゃない。すまない、リンゼイ。僕が出来るだけスチュワートを見張るから、もう暫く我慢してくれないかい」


「私こそお兄さまに任せっきりでごめんなさい」


「いいんだ。下手にリンゼイに逢わせでもしたら、彼が何をするかわかったもんじゃないからね。リンゼイにもわかるだろう?」


 もう子供ではなくなったリンゼイには、その意味するところが何となく解り、ゾッとする。


「こんなこと想像もしたくないが、既成事実を作って妻にしようとするくらい、彼は焦っているように思えるんだ。だからリンゼイはこれまで通り、スチュワートに逢わないようにして」


 リンゼイは青ざめながら、ぎこちなく頷く。


 ジョシュア以外に触れられるのを想像するだけで、吐き気がしてくる。


 口づけをして、肌を重ね、秘めたる部分にも触れられ……。そんなこと絶対に嫌だ。ジョシュア以外とするくらいなら、舌を噛み切って死んでもいいと本気で思った。




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