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王女様の不埒な暴走
第10章 迫りくる刻、そして……
「それからリンゼイ様にはこちらをお渡しするようにって」
ライラは部屋に来たときから手に持っていた小包をリンゼイに渡す。それは何の変哲もない、両掌に乗るサイズの小さな箱だ。
「万一、荷物を調べられてもいいように、手紙などは預かっていません。ですがこちらをジョシュアさんから預かってきたんです」
「開けてみてもいい?」
「はい。私は中身を存じませんけど」
リンゼイは高鳴る胸でその箱を開ける。
中には一枚のハンカチーフのみが入っていた。
「あら、可愛いハンカチですね」
リンゼイがそれを広げると、ライラがクスリと笑いながらそう零す。
「これ……」
ハンカチーフを見た途端、リンゼイの双眸に涙が滲む。そこには鮮やかで様々な糸を使われたハートマークが刺繍されていた。
「へぇ、ジョシュアさんってこういうことするんですねぇ」
ライラは少し可笑しそうにしているが、リンゼイは嬉しさと恋しさが溢れるようだった。
以前、キャンディスをジョシュアの恋人と勘違いしていたとき、彼女のために作られたハンカチーフを羨ましく思った。きっとリンゼイのそんな気持ちなんて彼はお見通しだったに違いない。
だからリンゼイにはありったけの想いを込め、忙しい時間をぬい、これを作ってくれたのだ。その姿を思い浮かべ、愛しさに涙が零れ落ちる。
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