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王女様の不埒な暴走
第2章 姫は運命に抗らう



「……お姉さま。私……結婚しなければならないのはわかっているんです。こうやって籠城していても、お父さまがお決めになった結婚から逃れられないことも……。でも私、あの方に純潔を捧げたいんです」


 自分がどれほど大胆なことを口にしているのか、リンゼイにだって解っていた。夫となる人以外と契りたいなど、はしたないことこの上ない。ともすれば姉に軽蔑されるかも。それでもリンゼイは細い肩を震わせ、誰にも言えない心の内を吐露した。


「リンゼイ……」


 姉の細い指がリンゼイの目許に這わされる。それで初めて泣いていたのだと気付く。


「夫以外と結ばれれば、このカンターヌでは結婚は難しくなる。貴族の男は妻になる人に処女を求めるものだから。たとえリンゼイの想いが遂げられても、彼がリンゼイを娶る気がなくて、処女を失うだけじゃなく、彼も失い生涯結婚出来ない身になっても……純潔を捧げたい?」


 涙を拭う姉は軽蔑の眼差しを向けてはおらず、真剣そのものの視線を投げている。


 姉の問いに一瞬迷った。


 結婚出来なくなるのはリンゼイにとって重要じゃない。迷ったのは、他の男に純潔を捧げたことを周りに知られ、王家の権威が失墜し、これまで築いてきた民からの信頼を損ない、家族に迷惑をかけてしまわないかということだ。









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