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王女様の不埒な暴走
第11章 物語の結末は
父に頼んでから数日。リンゼイは何も手につかない状態だった。
食事すらまともに摂れず、日に日にやつれるリンゼイを家族は皆心配したが、喉を通らないのだ。
ジョシュアを忘れるとは言ったが、どうやって忘れればいいのだろう? 忘れ方が解らない。
彼の髪も眼も唇も。囁きかける声や、触れる指も。肌の温もりや腕の逞しさも。
すべてをこんなにも覚えているというのに。
父はジョシュアはもう迎えに来ないと言った。けれどその考えはリンゼイにはなかった。なぜだか不思議と今も彼と気持ちが通じ合っている気がしてならないのだ。……ただの期待と言ってしまえばそれだけだが。
ジョシュアはきっとリンゼイが待っていると信じ、奔走している。それなのに自分は彼を待てなかった。
決して折れないと誓った。頑張るとも誓った。
だがこの王城の外に暮す人々を思うと、この恋を守り抜くのが本当に正しいのか解らなくなる。
ジョシュアは自分を裏切ったリンゼイを責めるだろうか? それともリンゼイを待たせてしまい、苦渋の決断をさせた自分を責めるだろうか?
きっと彼は後者だ。彼はそういう人だ。
国中の民の笑顔を守れても、ただ一人愛する人の笑顔を守れない自分がひどく嫌でならない。
けれど泣いても、泣いても現実は変わらない。願うのは、彼がこの先別の幸せを見つけ、笑顔でありますように……それだけだった。
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